1枚のグラフで知る人口ボーナス期
戦後から最近までの生産年齢人口(15〜64歳)のトレンドとGDP(名目暦年、以下同じ)の関係を見てみましょう。
【速読解Biz】人口ボーナスと団塊の世代
人口ボーナス期の条件
人口ボーナスとは、総人口における生産年齢人口の増加により労働力が豊富になり、経済活動が活発になり、人々が豊かになる、人口によるご褒美と言われます。
生産年齢人口が増えるだけではなく、従属人口(年少人口;15歳未満、と老年人口;65歳以上の合計)の相対的比率低下も必要です。 年少人口の増加があれば、教育支出等の増加します。一方、老年人口の増加があれば、社会福祉等の支出の増加等、負担が増加ことになります。即ち、従属人口の相対的な比率増加は、人口ボーナスを減らすことになるでしょう
一般に人口ボーナス期とは、人口構成要素が大きいため、以下の3つの条件にあう期間であると言われています。
(a)生産年齢人口が継続的に増加していて、同時に総人口に対する従属人口の比率が低下している期間
(b)生産年齢人口が、従属人口の2倍以上になっている期間
(c)上記の(a)と(b)の条件を満たしている期間
すなわち、人口ボーナス期とは、労働力の源泉である生産年齢人口(15〜64歳)が、子供の教育や老人の福祉への投資を気にすることなく、活動し、その結果として経済が成長する期間といえるでしょう。
人口ボーナス期は、これらの条件だけではなく、これらの条件のもとで、労働者の活力を生む社会や経済の制度、加えて政治制度が、その条件下で人口構成の変化に適合していることが必要であると言われています。
人口構造変化の節目が分かる年表
1枚のグラフでは、散布図のポイントが色分けされています。
節目となる年度の内容をみてみましょう。
・1964年(S39)生産年齢人口が、従属人口の2倍を超える
・1966〜72年(S40〜46)団塊の世代(1947〜49年生まれ)の社会進出の期間
・1971〜74年(S46〜49)第2次ベビーブーム、出生数の増加期間
・1982年(S57)従属人口が継続した減少が始まる
・1990年(H2)この年まで、従属人口が継続減少する
・1995年(H7)生産年齢人口8,716万人、ピークを迎える
・1996年(H8)生産年齢人口が減少に転ずる
・2004年(H16)この年から生産年齢人口が従属人口の2倍以下になる
条件(a)の内、生産年齢人口の増加は1950年時点で始まっています、継続的に増加しピークとなる1995年まで継続することになります。
条件(a)の従属人口比率の低下も、生産年齢人口の増加とともに1950年以降低下しています。ただし、日本では団塊の世代に世代の形成による第2次ベビーブームにより、従属人口の内、年少人口が1968年から1978の間に増加が見られます。
条件(b)の(生産年齢人口)>(従属人口の2倍)の期間は、1964〜2003年の期間です。
条件(c)は、条件(a)と条件(b)を満たす必要があります。 従属人口の内、老年人口は継続的に増加していますので、条件(c)は、年少人口の動向によっています。
人口ボーナス期の入り口は、団塊の世代の社会進出の時期と一致
日本の生産年齢人口と名目GDPの関係を見てみましょう。
1955年から2019年までの、生産年齢人口とGDPの相関をグラフで見ると、その関係性は3つのブロックに分かれているように思われます。
1つ目は、復興成長期です。
日本は戦後、1964年の東京オリンピック前に大きな復興がありました。
1955年のGDPは8.96兆円でしたが、生産人口も増加しましたが、1964年は27.36兆円と3倍増になっています。
2つ目が、人口ボーナス期です。
1964年、生産年齢人口が、従属人口の2倍を超えます。
1966年には、団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)の22年組が、高校卒業後の社会人1年目の年であり、1972年は、24年組が大学卒業の年にあたります。
ちなみに1972年の大学進学率は21.6%で初めて20%を越えた年です。
人口ボーナス期は、この1964年から、従属人口の減少継続が続く1990年から生産年齢人口がピークを迎える1995年頃までと言っていいでしょう。 この期間に人口は1,368万人18.6%増加し、GDPは523%増となっています。
人口オーナス期にある日本の21世紀
3つ目が、人口オーナス期です。
2004年に生産年齢人口が従属人口の2倍以下になります。
21世紀は人口オーナス期に入っています。2008年のリーマンショック前後のGDPの変化も見て取れます。昨年、生産年齢人口はピークから13百万人約15%減少していますが、GDPは13.5%増加となっています。
人口オーナス、すなわち社会負担や増える時期ですが、このオーナス期、日本にとって終わることない時代です。 日本は生産年齢人口が減少していますが、リーマンショック以降、再びGDPは増加傾向にあります。ただ、その伸びはゆっくりな様に見えます。
日本の人口ボーナス期の経済成長は、急激な労働生産性の向上をもたらしましたが、労働力の総量を減らす側面が強く、付加価値額総量を増加させる面が不足していたのでしょう。
その結果が、オーナス期と相まって低成長になっているのでしょう。
人口減少に伴い人的リソースの質的向上と、イノベーションが必須の時代となっています。
GDPなどの国民経済計算の諸計数は、各種の基礎統計を基に作成されています。国民経済計算も5年毎に基準改正を行って、過去に戻って反映されます。従って、異なる参照年のGDPの実額比較では値が異なって直接比較することができません。
今回は比較的長い期間の一定基準でのGDPの値が必要なため、下記の出典Bを利用しています。
出典A、Bを2024年4月9日利用・加工して当サイト“人口動向ラボ”が作成しています。
出典〈A〉:国立社会保障・人口問題研究所HP(https://www.ipss.go.jp/)/将来推計人口・世帯数/日本の将来推計人口(全国)〉/令和5年推計報告書・詳細結果表〉推計結果(総人口)/1出生中位(死亡中位)推計〉「資料表1-1総人口、年齢3区分別人口及び年齢構造係数1950~2020」URL)https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/db_zenkoku2023/s_tables/app1-1.xlsx
出典〈B〉:内閣府HP〉経済財政白書/経済白書/令和2年年次経済報告 URL)https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/h12_data01.html